尿漏れと頻尿…様々な臓器が関係
東京都新宿区のA子さん(72)は、10年ほど前から、頻尿と尿漏れに悩んでいた。
昼夜問わず、何度もトイレに駆け込む。その途中で、漏れることもある。日中も、尿漏れパッドが手放せない。排尿後も、尿が残った感じがある。
あちこちの泌尿器科を回った。「年のせい」などと言われ、薬をもらったが、良くならなかったという。
あきらめかけた2005年、神奈川県横須賀市立うわまち病院泌尿器科部長、奥井伸雄さんの本を読んだ。女性の排尿の症状や原因が、マンガで解説してあった。
尿漏れと頻尿の症状には加齢や閉経が関与している。閉経で女性ホルモンが減れば、骨盤内の血行が悪くなる。その結果、膀胱(ぼうこう)は小さくなり、尿をためる量が減る。尿道も狭くなり、排尿の勢いが衰えて残尿が増える。膣(ちつ)も委縮し炎症を起こす。さらに、骨盤内の臓器を支える筋肉の骨盤底筋がゆるみ、尿漏れにつながる……。
「年のせい」とは、こういうことだったのか。A子さんは本を読み、初めて得心がいった。
奥井さんは、こうした女性特有の症状を専門的に診る「女性泌尿器科」を担当しているという。最後の望みをかけて、受診した。
まず採尿し、排尿回数、どんな時に尿が漏れるか、などを問診票に記入した。
次に内診があった。産婦人科の診察同様、台にあおむけに座り足を広げる。尿道や膣、肛門(こうもん)に指や器具を入れ、子宮や膀胱、直腸の位置や大きさなどを調べる。
「A子さんの骨盤は今、こんな具合です」
奥井さんは、イラストを描いて説明を始めた。
膀胱は委縮し、尿道が狭くなり、膣に炎症がある。さらに、直腸が下がり気味で、膀胱を刺激していることも頻尿の原因だという。
「直腸に硬い便がたまると、より膀胱が刺激され尿意が出ますし、いきんで排便すると、直腸がもっと下がってしまう。便秘の解消も重要です」
これまでの尿漏れと頻尿の受診では、直腸や膣を診てもらったことはなかった。「頻尿の原因が、膣や直腸の変化にもあったと知り、驚きました」とA子さんは振り返る。
尿漏れや頻尿の患者が受診した場合、産婦人科では子宮や膣は診ても、膀胱や尿道、直腸の症状は見過ごされがちだ。一方、泌尿器科では膀胱や尿道の状態に注目するが、膣炎などは見逃されることが多い。
米国の大学病院で2年間、「女性泌尿器科」の研修を積んだ奥井さんは「尿漏れと頻尿などの原因は複雑で、様々な臓器が関係しています。診療科の枠を超え、総合的に診療する必要があります」と強調する。
