「過活動膀胱」突然催す強い尿意にはご用心!
日本は諸外国に比べて高齢化が進んでおり、来年には65歳以上の人口の割合が20%になると推計されています。
年をとるとトイレが近いとか、尿が漏れるということを耳にします。そのような症状は直接、生命にかかわることはありませんが、日常生活を送る上で大変支障となり、“生活の質”が損なわれます。また、恥ずかしいという理由で、なかなか病院に来ないのが現状です。
若い人でもトイレが近くなったり、尿が漏れそうになった経験がある人が意外に多い様です。最近、過活動膀胱(OAB・Over Active Bladder)という概念が注目されています。
この過活動膀胱は、2年前の国際禁制学会で決められた頻尿や尿失禁の分野での新しい診断名です。すなわち、過活動膀胱とは突然、止めようのない強い尿意が出現する“尿意切迫感”を有する状態です。
通常、頻尿(昼間8回以上、夜間1回以上)を伴いますが、時に切迫性尿失禁(急に強い尿意が起こり、トイレで排尿するまで我慢できず、尿を漏らしてしまう)も認められます。ただし、局所の疾患である膀胱炎や膀胱癌(がん)、心因性障害によるものは除外します。
欧米では成人の16%が過活動膀胱に罹患(りかん)しており、身近な疾患である関節炎や慢性副鼻腔炎の患者数に匹敵しています。我が国でも800〜900万人いると推計され、今後も増加傾向にあります。過活動膀胱は現在注目されている疾患です。
過活動膀胱の原因として、脳梗塞(こうそく)などの脳血管障害や、脊髄(せきずい)疾患による神経障害に伴うもので神経因性膀胱と呼ばれている病態があげられます。また、加齢や前立腺肥大症などによる下部尿路閉塞(へいそく)もその原因です。さらに、慢性膀胱炎などにより膀胱の知覚過敏状態と過活動膀胱との関連が注目されています。
最も患者数が多いのは原因が不明な特発性の過活動膀胱です。このメカニズムとして、膀胱排尿筋や膀胱を支配している神経の異常が複合的に関与していると推測されています。
過活動膀胱の診断は尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁の自覚症状のみで行います。膀胱内圧測定などの専門的な検査は必要なく簡単に診断が下されます。医師は、脳血管障害、パーキンソン病、脊髄疾患、直腸や婦人科手術の有無、糖尿病、前立腺肥大症などの既往も患者さんから聞きます。
過活動膀胱は、尿検査にて尿路感染症や血尿がないことを確認し、その後、超音波などで残尿量を測定します。また、1日の排尿の状態を正確に把握するため患者さんに排尿日誌をつけて頂くよう指導します。その結果、夜間多尿の傾向があったり、水分を取りすぎたため頻尿になったことが分かり、患者さんの状態に即した生活指導が可能になります。
過活動膀胱の治療は抗コリン薬による薬物療法が第一選択となります。この薬により、膀胱平滑筋の不随意の収縮を抑えて症状が改善されます。治療の効果は2週間から1か月でみられます。しかし、抗コリン薬を服用することで、口渇や便秘などの副作用が出ることがあるので注意を要します。
2007年秋には、口渇の副作用が少ない新しい抗コリン薬であるトルテロジンが発売される予定です。なお、抗コリン薬で過活動膀胱に効果がなければβ神経刺激薬、平滑筋弛緩(しかん)薬、漢方薬、抗うつ薬などが用いられます。薬物療法と併行して、生活指導や骨盤底筋体操を行うとさらに効果が高まります。
高齢化社会において過活動膀胱の患者数は急増しています。その診断は自覚症状から簡単になされ、治療法も確立されていますので、過活動膀胱の症状のある方は早めに泌尿器科を受診されて“生活の質”を高めて頂き日常生活をさらに有意義に過ごして頂きたいと思います。
今、何位でしょう?

