子宮内膜症には、抗アレルギー薬が効く!!
横浜市に住む主婦Aさん(35)は、20代から子宮内膜症の痛みに悩まされてきた。数年前、卵巣にできた内膜症の病巣を手術で取り除いたものの、わずか2年で再発。鎮痛剤でしのいできたが、不妊にも悩んでいた。大森赤十字病院で処方されたアレルギー治療用の「ロイコトリエン拮抗(きっこう)薬」を飲み続けたところ、生理痛が軽くなった。半年で自然妊娠し、昨年、男の子を出産した。
子宮内膜症は、卵巣や腹膜など体内の様々な場所に、子宮の内膜に似た組織ができる病気。悪性ではないが、ホルモンに反応して月経の度に大量に出血するなどし、強い月経痛や性交痛を引き起こす。国内で年間の子宮内膜症の受診患者は約12万人と推計され、不妊の原因の一つでもある。子宮内膜症は、20―30歳代に多く、若い女性にとって深刻な病気の一つだ。
はっきりした原因はわからないが、子宮内膜症は、これまではホルモン剤で人工的に閉経状態にしたり、経口避妊薬で妊娠時に似た状態を作るなど、いずれも薬で月経を止め、進行を抑える治療が主流だった。ただ、ホルモン剤では更年期障害に似た副作用が出るうえ、いずれの薬も排卵を抑制するので、妊娠を望む患者には向いていない。内視鏡手術で病変を取り除く場合も、再発の可能性は消えなかった。
大森赤十字病院産婦人科医師と栃木臨床病理研究所長らは、子宮内膜症の発症にアレルギー反応が関与している可能性を動物実験で確かめた。さらに、人間の内膜症組織を顕微鏡で詳しく調べたところ、アレルギー反応にかかわる「肥満細胞」という特殊な細胞が異常に増えていることを発見した。
詳しいメカニズムは不明だが、大森赤十字病院産婦人科医師と栃木臨床病理研究所長らは「子宮内膜症は卵管を通って月経血が逆流し、アレルギーを起こしているのではないか」とにらむ。そうであれば、既存の抗アレルギー薬で症状を緩和できる可能性がある。中でも、アレルギーを誘発する体内の物質ロイコトリエンの反応を抑える「ロイコトリエン拮抗薬」が、増えすぎた肥満細胞を消滅させる効果が高いとわかった。
子宮内膜症患者には、花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患を併せ持つ人が多い。そこで大森赤十字病院産婦人科医師と栃木臨床病理研究所長らは、気管支ぜんそくを持つ子宮内膜症患者約100人に、2週間―3か月間、1日1度、ロイコトリエン拮抗薬を服用してもらった。その結果、約8割の人で月経痛の改善や月経血量の正常化がみられたという。
服用後に子宮内膜症の手術を行うと、組織がはがれやすく、手術が容易なうえ、出血もわずかで、手術時間を短縮できた。服用後、半年―1年で妊娠した人が次々に出ており、大森赤十字病院産婦人科医師と栃木臨床病理研究所長らは「妊娠を望む患者に適している」と話す。
ロイコトリエン拮抗薬は、ぜんそく発作を予防する薬として数年前から使われ始めた。子宮内膜症治療の場合、患者は毎日、錠剤を飲む。ぜんそく薬としては保険がきき、3割負担の場合の薬代は1か月約3000円。ぜんそく症状のない子宮内膜症患者にも処方できるが、その場合は原則として保険がきかない。副作用は少なく、胃がもたれやすくなる程度という。
子宮内膜症に効果が出てくれば、医師と話し合って服用を止めることもできる。まだ始まったばかりの治療で、有効性の確認にはさらに大規模な調査が必要だが、大森赤十字病院産婦人科医師と栃木臨床病理研究所長らは「薬の処方が可能かどうか、近くの産婦人科で相談してほしい」と話しているようだ。
