多のう胞性卵巣症候群とは?
東京都の会社員A子さん(29)は、月経の周期が不順で、不正出血もあったことから、24歳の時、東大病院(東京・本郷)を受診した。月経不順や出血には様々な原因があるが、血液と超音波検査で「多のう胞性卵巣症候群(PCOS)」と診断された。黄体ホルモンなどの薬による治療で、月経のように周期的な出血を起こし、子宮体がん予防にもなっている。
月経は、脳や卵巣から分泌される様々なホルモンの働きで起こる。
卵子を含む卵胞というふくろが卵巣内で成長すると、破れて中から卵子が飛び出す。これが排卵だ。その間、子宮では、受精卵を迎えるため、子宮内膜が厚くなるが、受精しないとはがれ落ち、血液と共に排出される。月経は、一般に25〜38日の範囲で繰り返される。
多のう胞性卵巣症候群では、脳から分泌される黄体化ホルモン(LH)が増える影響などで、卵胞の皮膜や副腎からの男性ホルモンが増える。排卵時期に卵胞は通常15〜20ミリまで成長して破れるが、男性ホルモンが成長を抑えてしまうため、10ミリ以上には発育しない。
このため、排卵が定期的に起こらず、月経周期が年数回など不順になったり、無月経になったりする。また、子宮内膜は増殖したままになり、不正出血を招くほか、子宮体ガンになりやすくなる。また、多毛やニキビなどの症状が現れることがある。
多のう胞性卵巣症候群の卵巣を超音波でみると、排卵できなかった小さな卵胞が数珠のように並んでいる「多のう胞性卵巣」の状態が確認できる。通称「ネックレスサイン」とも言われる。10〜40代女性の5%ほどにみられるという。
A子さんのような月経不順や出血、あるいは不妊を訴えて産婦人科を受診して多のう胞性卵巣症候群が判明することが多い。基礎体温を測り、排卵や月経周期を確認した上で、超音波で卵巣の状態を調べ、血液検査でホルモン量を測り診断する。
日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会は今年4月、多のう胞性卵巣症候群の診断基準を定め、〈1〉月経異常の症状がある〈2〉卵巣に多数の小さな卵胞が確認される〈3〉血液中の男性ホルモンか黄体化ホルモンの値が高い――の三つを満たす状態とした。同委員会は現在、治療指針の策定を進めている。
多のう胞性卵巣症候群の治療は、排卵の頻度に応じ、定期的に黄体ホルモンや経口避妊薬・ピルを服用、人工的に月経を起こして、子宮内膜をはがす薬物療法が行われる。A子さんの場合は、10〜14日間、薬を飲み、約2週間休むペースで続けているが、特に気になる副作用はないと言う。
妊娠を希望する患者には、排卵誘発剤(一般名・クロミフェン)を使う。効果がなければ、レーザーや電気メスで卵胞をつぶす内視鏡手術を行う。一連の治療で8割以上が一時的には排卵が戻るという。
東京大産婦人科講師は、「多のう胞性卵巣は以前は排卵障害による不妊が主な問題と考えられていたが、月経不順を放置すると子宮体がんの危険が高まる場合があることもわかってきた」と言う。40歳以下の子宮体がん患者の3分の2にこの病気が見つかる。
そのほか、多のう胞性卵巣症候群の患者の半数以上に、血液から糖分を取り込んでエネルギーとしてたくわえるインスリンの働きが鈍くなる「インスリン抵抗性」がある。欧米では肥満の割合も高く、長期的に糖尿病や心臓疾患になる危険にもつながる。 東京大産婦人科講師は、「月経不順の症状があれば、早めに産婦人科を受診してほしい」と話している。
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