糖尿病の腎症を発症したら、高額な人工透析が必要だ!
糖尿病腎症は、網膜症、神経障害とともに糖尿病の3大合併症の一つであり、糖尿病に特有な厄介な合併症である。糖尿病腎症は網膜症と同じように、高血糖状態が長期間継続すると腎症を発症する。
尿というのは、腎臓の糸球体という場所で血液から体内の老廃物と一緒に「ろ過」され、尿細管で体に必要な成分は再吸収され、残りが尿として体外に排泄される。
糖尿病では、高血糖のため、腎臓の糸球体の毛細血管が変化したり、構造が破壊されたりして、だんだんと病変が進行する。臨床的には、尿タンパク質(初期には微量アルブミン)が尿から検出されるのが病状の始まりであり、次第に高血圧や浮腫(手足が腫れ、押さえるとへこむ)が出現し、最後には腎機能が悪化し老廃物を対外へ排泄できず腎不全に陥る。
私が医師になった40年前には、腎不全になれば尿毒症で死亡という事例が多く見られた。しかし、現在は、人工透析(人工的に血液をろ過し、老廃物を体外に排泄する)を行うことで社会生活を継続できるようになった。
とはいっても、1日4〜5時間、週3回人工透析を受けなければならず、医療費の増大なども加わり、患者の生活の質(QOL)は大幅に低下する。
近年、糖尿病腎症で新たに人工透析を受けなければならない患者が増加し、その数は年間で1万4000人になる。人工透析医療は、1人あたり年間約500万円を必要とし、医療費増大(公費負担制度で本人負担は少額だが、社会全体にとって大きな負担)の一因になっている。
糖尿病網膜症のために失明し、しかも、糖尿病腎症で人工透析治療を20年以上続けている、ある男性(67)を紹介したいと思う。
この男性は、13歳で1型糖尿病を発症し、インスリン治療を続けてきたが、「何でもよく食べる」という食生活のせいか、糖尿病の血糖コントロール状態は決して良くはなかった。
さらに、この男性は大学卒業後、一流大企業の研究職に就職し、研究活動に日々励んでいたが、ある日、本人から「パチンコをやっていたら、突然、目が見えなくなってしまった!」と驚くべき電話があった。この日以後、男性は血糖コントロールの安定に努めたが、眼底出血を何度も繰り返し、とうとう30歳で失明してしまった。さらに、この10年後には腎不全も併発し、人工透析を開始するはめになった。
失明、人工透析という重度の病状にもかかわらず、男性は決して希望を失わなかった。献身的に介護してくれる奥さんとの二人三脚で、「松島に旅行してきた」「万博会場は楽しかった」という充実した生活を送っており、心から敬服すると同時に彼の療養生活の無事を祈っている。
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